顎関節症| 口腔外科専門医による、口腔外科専門サイト。
顎関節症・親知らず・抜歯・口腔腫瘍・受け口・口腔ガン等について解りやすく解説。

口腔外科専門サイト おおくら歯科口腔外科監修

顎関節症

どんな時、顎関節症なの?

「硬い物を噛むと、こめかみや耳の付け根が痛い」
「食事中にアゴがカクカク鳴って、物がうまく噛めない」
「突然、口を大きく開けようとしたら痛みが出て、開かなくなった」
「以前から痛みや音がしていたが、最近ギリギリとした変な音になって来た」
「食べ物を噛んでいたり、人としゃべったりしているとアゴがだるくなる」

このように、顎(アゴ)の運動時に生じる
カクカク、ギシギシ(関節雑音)、痛くて噛めない(疼痛)、口が開きづらい(開口障害)など
この様な症状があれば、顎関節症です。

セルフチェック(自己診断)してみましょう。
口を思いっきり開けて、指が縦に3本入れば問題ありません。
指が3本入らない!
口を開けたり、閉じた時にガクンと音がした!
物を噛むとこめかみが痛い!

顎関節症の疑いあり。

症状を放置せず、すぐに専門医に診てもらいましょう。

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どこにかかればいいの?

顎の関節は、耳の穴の前にあります。
頭が重い、こめかみが締め付けられる、首筋や肩がこる症状も伴っている方もいます。
症状によっては、耳鼻科や整形外科にかかってしまう方もいます。
ですが、歯科、歯科口腔外科、大学病院の顎関節外来などに受診してください。
口腔外科であれば、(社)日本口腔外科学会認定 口腔外科専門医の診断を受けてください。

最近は、どこにかかったらよいかわからず、症状が出てからかなり経過して、受診する方もいます。
特に関節円板というクッションがずれてしまったままにしている方が多くみられます。

今はアゴがカクカク鳴っているだけでも、突然、口が開かなくなったり、アゴの関節が変形してくる恐れもあります。
セルフチェックをして、もし顎関節症の疑いがあれば、すぐに専門医に診てもらいましょう。

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顎関節は?

下アゴの関節で、左右の耳の穴の前に位置しています。

人差し指で耳の穴の前の皮膚を触りながら、口を開け閉めするとガクガク動くカタマリが、下アゴの関節の骨(下顎頭)です。
この骨は、頭の骨(側頭骨)の凹みにはまり込んでいて、口を開けると凹みから移動して前下方に移動します。

このとき、この運動を助けているのが、関節円板(かんせつえんばん)です。
凹みの中央に位置し、下アゴの骨と一緒に移動し、骨と骨がぶつからないようにクッションの役目をします。ちょうど下顎頭の上に帽子のように乗っています。

下アゴを動かしているのは、咀嚼(そしゃく)筋と呼ばれる筋肉です。
頭蓋骨にぶら下がっている下アゴを上下、左右、前後と複雑に動かしています。
会話、呼吸、食事など、それぞれの状況に合わせて下アゴは動きます。
また、くいしばり、歯軋り、大きなあくびの時も筋肉が働きます。
この時、顎関節がその運動の要となります。
ですから、障害も受けやすいのです。

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顎関節症のタイプは?

障害を受けた組織(ダメージをうけた部分)によって、診断や治療が異なります。そのため、顎関節症は、タイプ別に分類されています。

障害を受けやすい組織とは?咀嚼筋、関節包や靭帯、関節円板、関節の骨です。

顎関節症は障害を受けた部位によって、V型に分類されます。

I型は、アゴを動かす筋肉に障害が生じるもので、主に咀嚼筋(そしゃくきん)に痛みが表れます。
咀嚼筋には、こめかみから頭にかけて張り付いている「側頭筋」、頬骨と下アゴをつなぐ「咬筋」、アゴの内側と頭蓋骨をつなぐ「内側翼突筋」「外側翼突筋」があります。
その他に、口を開ける筋肉として、下アゴの後ろにある「顎二腹筋」があります。

II型は、顎の運動痛と噛み締め時の痛みで、関節包、関節靭(ジン)帯の炎症、損傷がその病態とされています。

III型は、開閉口時にコキッ、あるいはカクンといった撥(は)ねるような音を生じたり、開閉口時に引っかかりがあったりするもので、関節のクッション役をしている関節円板の位置の異常による障害です。

IV型は、慢性の関節痛、グシャグシャ、ギリギリという雑音がみられ、下顎頭の変形(骨の障害)を生じた状態です。

V型は、その他、I~V型にあてはまらないものです。

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顎関節の診断は?

診断は、重要です。
特に関節円板がずれているかどうか、下顎頭に変形が生じていないかどうかが重要です。
顎関節のレントゲンや診査により判断します。
場合によっては、MRI検査を行います。
そしてどのタイプの顎関節症か診断します。

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顎関節症の原因は?

「成長とともにアゴが変形してきた」
「うつぶせに寝る習慣がある」
「アゴの下に手をひいて寝る」
「よくほおづえをつく」
「アゴが小さく姿勢が悪い」
「歯並びやかみ合わせが良くない」
「アゴがずれている」
「奥歯を抜いたまま放置した」
「くいしばり、歯ぎしりをする癖がある」
「硬いものを噛むのが好き(フランスパン、スルメ、お煎餅など)」
「1日中ガムを噛んでいる」
「いつも片方の歯で噛む」
「楽器を吹く、バイオリンを弾く」

これらは、顎関節症と診断された方にみられた症状や生活習慣、癖です。
いずれも、顎関節や咀嚼筋に長時間あるいは慢性的に負荷や負担がかかることで発生しています。
顎関節症は、ご自身の生活習慣、癖、ストレス、かみ合わせ、アゴの形、姿勢などの複数の要因が重複してなると考えられています。

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顎関節症の治療法は?

顎関節症の治療は、保存療法セルフケアです。
保存療法には、薬物療法、運動療法、スプリント療法があります。
薬物療法は、筋肉痛、自発痛(関節がジーとしていても痛い)、運動痛(口を開けると痛い、物を噛むと痛い)など、痛みの種類と程度により消炎鎮痛剤を服用します。
タイプ別のI、II型と診断された顎関節症に適応されます。

筋肉の痛み、コリが認められる場合には筋弛緩薬も服用することがあります。
タイプ別のII型と診断された顎関節症に適応されます。
また、シップ剤、消炎鎮痛剤入りの塗り薬を使用することもあります。

運動療法には、関節円板整位運動療法下顎頭可動化訓練があります。
関節円板整位運動療法とは、関節円板がずれてしまった方に円板をもとの位置に戻す運動療法です。タイプ別のIII型と診断された顎関節症に適応されます。
下顎頭可動化訓練とは、関節円板が前にずれたままで関節の骨の正常な運動を回復させる訓練です。主に、タイプ別のIV型と診断された顎関節症に適応されます。
1日5分から10分、数回行います。
1ヵ月は継続し、その後継続が必要か判断します。

スプリント療法は、歯列を覆う「スプリント」呼ばれる装置を口の中に装着します。
タイプ別のすべての型の顎関節症に適応されます。
スプリントにより顎関節や筋肉への負担を軽減します。
また、夜間の歯ぎしり、くいしばりの予防にもなります。基本的に、夜間使用し2~3ヶ月行います。
「スプリント」は、歯列のかたどりをした後、厚さ1~2mmの透明なプラスチックで作ります。
運動療法や薬物療法と併用し、治療していく場合が多く、症状にあわせて診察時に調整を行います。

症例症例

セルフケアも大切です。
急性症状(痛みが強い、痛くて口が開かない、噛めない)の時は、とにかく安静です。
足首を捻挫したときと同じです。
硬いものやガムは避けてください。やわらかい食べ物にしましょう。
アゴの安静を保ち、口は大きく開けない。冷湿布を貼ります。
特に、長時間のパソコン操作、ストレスの多い仕事の場合、無意識にくいしばりが生じていることがあります。
慢性的に負荷がかかると、さらに症状は悪化します。
ポイントは、上の歯と下の歯を合わせないこと。離しておくこと。
歯と歯が合わないように意識してください。

筋肉のこり、慢性的な痛みの場合は、血行をよくするために、温湿布やマッサージを行います。
また、姿勢睡眠体位も重要です。
椅子に座る時の姿勢、頭を持ち上げて、背筋が伸ばす。
就寝時には、アゴや首に負担がかからないように仰向けまたは横向きで、枕は高いものを避けること。
寝ている時もうつぶせにならないように意識することです。

最後に、慢性化してしまった場合や症状の状態によっては、時に外科的な治療法を行うこともあります。
関節内に麻酔の注射を行い強制的に口を開けさせたり、関節鏡を使って癒着をはがしたり、手術で骨整形することもあります。
ですが、顎関節症の多くは、人生の中では一時的であり、再発はしても自然に治まる病気と考えられています。病状が進行してしまうのは、ごくわずかです。

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